知財訴訟

アップルとサムスン電子の知財訴訟

2011年4月、アップルがサムスン電子のギャラクシーシリーズがアップルの特許を侵害しているとして、カリフォルニアの連邦地裁に提訴したことからアップルとサムスン電子の知財訴訟は始まりました。一方のサムスン電子もアップルが無線通信技術などの特許を許可なく使用したとして、韓国、日本、ドイツでアップルを逆提訴し、その後、係争は、ヨーロッパにも広がっていきました。

アップル、サムスン訴訟の経緯

2011年11月、欧州委員会は、サムスン電子が侵害を訴えていた通信技術は、FRAND特許として技術の普及のために幅広く提供すべき標準特許であるとし、サムスン電子がアップルにFRAND特許を利用させないのは、EUの独占禁止法に違反するとしました。
2014年3月、米地裁は、サムスン電子に9億3000万ドルの賠償を命じる判決を下しました。5月には、サムスン電子に1億1,960万ドル、アップルに15万8,400ドルの損害賠償支払いを命じました。
この知財訴訟は、世界10カ国で50件以上の訴訟が繰り広げられました。

eディスカバリー(電子情報証拠開示)

米国での訴訟は、電子情報証拠開示、eディスカバリーの対象となります。eディスカバリーとは、米欧の民事訴訟や行政調査、審理の当事者に向けた電子情報証拠開示のための手続きルールです。米国では、2006年にFRCP(連邦民事訴訟規則)で厳密な運用が明文化され、このルールが守れない場合には、制裁金、および訴訟においてのペナルティが課せられるようになりました。訴訟や行政調査の当時者は、証拠開示の要求に答える義務を負います。アップル、サムスンの訴訟に関して、様々な証拠データが法廷に提出されたというニュースが流れていましたが、ここで開示されたデータがeディスカバリーにより開示が義務付けられたデータを含んでいます。

アップルとサムスンの証拠保全義務違反

アップルとサムスンの訴訟では、証拠データの保全義務違反というのも指摘されました。サムスンは、全てのeメールが2週間後に自動削除されるシステムを導入していましたが、アップルは、侵害通知をサムソンに行った2010年8月時点で削除を停止して、証拠保全を行なわなかったのは、証拠隠滅を図ったもので、証拠保全義務違反に当たるとして、制裁を求めました。これに対して、裁判所も一度は、この訴えを認めましたが、これ対して、サムスンは、アップルも証拠保全義務を果たしていないと主張し、裁判所もアップルが自社に不利な証拠を破棄した可能性があると認めて、双方の主張が無効となりました。

たった1通のメールが決め手に

陪審員が10億ドル余りの巨額の損害を認定するときに判断材料としたのがグーグルからサムスンの幹部に送られていた電子メールだと報道されています。グーグルの幹部がサムスンに対して、アップルのiPhoneにあまりにも似ているのでデザインを変えた方がいいというメールが証拠として提示されて、このメールにより、サムスン側もギャラクシーがiPhoneに似ているということを認識していたという証拠となったとのことです。このように電子データが評決に大きな影響を与えています。昔の訴訟ならば、段ボール箱を引っくり返して、証拠書類や郵便物を探しましたが、今の時代の訴訟では、ドキュメントファイルやメール、つまり、デジタルデータが重要な証拠となります。昔と今の大きな違いは何でしょうか?保存されているデジタルデータの量が膨大になったということです。この膨大な証拠データの中から、どのようにして、重要な証拠を見つければいいのかということが重要な課題となっています。実際に、膨大な証拠データの中のたった一通のメールが巨額の賠償金を左右してしまいます。

アップルが証拠開示のために収集したドキュメント量

この事例では、ホスティングされた総ドキュメント数は、3億5千2百万ファイル、6千万回の検索が行われ、訴訟に関わった弁護士事務所は、25に上り、75件の訴訟に発展し、4億ページのレポートが作成され、2千回の報告が行われました。このような大量データをどのように検索して、どうやってこれだけの数の法律事務所に効率良く証拠を渡していくことができるでしょうか?これを調べるためにリーガルテックの技術が米国ではどんどん進化しています。

電子データの証拠開示手順

実際に電子データを証拠開示するためには、証拠データを関連のあるデータを関連のないデータに仕分けをする作業が行われます。関連のあるデータをレビューアーが見つけると関係のあるというというチェックを付けます。

電子データの証拠開示手順1

同じように関連のないデータの場合には、関連ないというところにチェックを入れます。
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電子データの証拠開示手順2

こうやって、ある程度のデータの仕分け作業を行うと、ソフトウェアが自動的に関連するキーワードと関連しないキーワードの仕分けを行い、重要キーワードのランク付けを行います。
電子データの証拠開示手順2

電子データの証拠開示手順3

今度は、人間が行った仕分けルールをソフトウェアが解析して、自動的にデータの仕分けを行うことで、ドキュメントのレビュー時間を大幅に短縮することができます。ここでは、全体の16%のドキュメントのレビューを行うだけで、74%の関連のあるドキュメントの抽出を行い、65%の時間を削減しています。
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電子データの証拠開示手順4

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